日本の女性に「ブラキャンセル界隈」が誕生、ノーブラブームが到来www

日経MJ
2025年7月11日 2:00 [会員限定記事]

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ノーブは胸部分の裏地に特殊素材を使用し、素肌に直接着用できるようにした

NIKKEI MJ

女性が「ブラジャーをつけたくない」と思うのはどんなときだろうか。例えばお風呂上がり。仕事から帰った時もスーツと一緒に脱ぎ捨てたい。下着なしでも着られるブラレスウエア「no-bu（ノーブ）」を提案するキャンプ（東京・渋谷）の榊原美歩社長と鈴木愛子副社長にとっては、サウナで「ととのった」時だった。

2人がフィンランドを旅したのは2023年のこと。10日間で各地のサウナを巡り、気づいたのはノーブラの女性が多いことだった。「いいなあと思った」（榊原社長）。でも日本では無理だとも思った。

帰国して銭湯へ行ったある日のこと。ふと「せっかくリラックスしたのに、なぜまた下着をつけなきゃいけないの？」と疑問を抱いた。見回すと女性たちの背中には下着のあとがくっきり残り、赤くなっている。当たり前にやっていた行動が、実は女性を窮屈にしていると気づいた。

アンケートをとってみると、7割近くが不快感を抱いていた。ブラジャーもカップ付きキャミソールも一般的に胸下部分にはゴムがあり、締め付け感は免れない。

消費市場では近年、「あって当たり前」を見直す「キャンセル界隈（かいわい）」が活気づいている。浴槽を使わずシャワーで済ます「浴槽キャンセル界隈」やコンロを使わず調理家電を駆使する「コンロキャンセル界隈」などだ。「ブラキャンセル界隈」も潜在的なニーズは高そうだ。

とはいえ、日本でいきなりフィンランド式のライフスタイルを導入するのはハードルが高い。自宅で過ごす休日でも、家族がいたり宅配便を受け取ったり、人と接する機会は少なくないからだ。素肌に1枚でさっと着られる快適な服は作れないのか。

早速、手芸用品専門店に出向いてウレタン素材を買い、裏側からTシャツの胸元につけてみた。ウレタンを薄くすれば透けるし、厚くすれば見た目も着心地も悪くなる。カップ型だとずれが生じるため、ダーツを入れた特殊クッション構造で丸みをだした。胸を支えるゴムを排除して開放感を優先。一方で髪を結んだり手を上げたりしても脇から胸元が見えないよう、開き具合を調整した。

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キャンプの榊原美歩さん㊨と鈴木愛子さんもノーブを着用している

24年にクラウドファンディングサイト「Makuake（マクアケ）」で販売すると、26時間で初回生産分を完売した。その後追加販売し、600万円近い売り上げとなった。

一方で「ダーツの縫い目が目立つ」「ウレタンのカバー部分が短い」などの課題も明らかになった。縫製ではなくプレス加工で丸みをつけ、胸のカバー部分はショートとロングの2種類にした。再びMakuakeで6日まで販売し、1000万円以上を売り上げた。6月末からは自社サイトでワンピースなども販売している。ウレタン部分に小さな穴をあけて涼しくするなど、日々改良を続けている。

心と身体を緩める時間があれば、また元気に動き出せる。「再び動き出すための服」と位置づけた。しかし快適さゆえかノーブの着用シーンは自宅を飛び出し、犬の散歩や入院・通院時などに広がっている。「夫の実家に着ていった」という人もいたそうで、慣れればどこまでも行けそうだ。

ジェンダー先進国として知られるフィンランドへの旅行目的は、サウナともう1つあり、「女性の生き方を学ぶこと」だった。榊原さんと鈴木さんは「女性は自分に必要な快適さを選ぶことで、もっと自由で活動的になれる」と話す。

（編集委員　中村奈都子）

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