電車の中で可愛いと思った子のカバンにこっそりＡｉｒＴａｇ入れると便利だぞ

https://digital.asahi.com/articles/ASP6C578DP67UPQJ00P.html

ツイッターの登場で激変した新聞と読者の関係

朝日新聞が発行され、100年以上になる。投稿欄などの例外はあるとはいえ、大きな流れでいえば、新聞は長らく、記者が書いて、編集者が組み、読者が読むものだった。ところが、この20年あまり、ベクトルは大きく変わっている。新聞社→読者の矢印は、双方向にかじを切った。状況をもっとも大きく変えたのは、ツイッターの登場だと思う。
私がツイッターを使い始めたのは2010年。週刊誌AERAに出向していたときだ。雑誌は毎週の売り上げが生命線であり、読者の反応に新聞よりもはるかに敏感だ。記事は毎号読者の人気投票でランキングされる。自分がスクープだと思って書いた硬派の記事が芸能ニュースの足元にも及ばないことにショックを受け、新聞の「報道的価値観」と世の中の関心の所在の違いをまざまざと見せつけられた。
悩んでいたときに、取材先や上司に受けた助言が「ツイッターで自分の記事を検索してみたら」というものだった。それまでも検索サイトで掲示板などに書かれる自分の記事の反響を調べてはいたが、ツイッターでは、やっていなかった。実名アカウントをつくるには当時、会社に届け出るなどの手続きが必要だったため、ひとまずニックネームでアカウントをつくり、自分の記事を検索してみた。
すると、賛否両論、まったく知らない世界が広がっていた。
ツイッターは利用者が関心が高い話題については、すばやく、ものすごい勢いで拡散する。一方、こちらが「重要なニュース」と格付けしていても、関心がある人がいなければ無視される。極論が広がりがちではあるが、自分が知らなかったような視点が示されることも少なくない。何より、そもそも自分の書こうとした意図が伝わっていないことがよくある、というのもわかった。デスクはある程度、書こうとするテーマの共通認識をもっているが、一般の読者は、記事で初めてその話題と対面する。一期一会の一本勝負でのぞまないと、筆者の意図は伝わらないのだ。
ツイッターは自分が関心があるテーマの下調べにも役に立つ。これまでであれば、社内データベースで過去記事を調べ、その分野に詳しそうな人に取材を依頼していた。ツイッター登場後は多様な立ち位置の識者がどんなコメントをしているかを事前に確認しておくのが基本だと思う。
災害、事件、事故となると、より顕著だ。
1995年に私が入社したときは、とにかくサイレンの音に耳をすまし、何か聞いたら警察署に電話してすぐに確認するように、と教えられた。地道な取材の必要性は変わらないが、自分が見聞きできる範囲は限られる。ひとたび何か起きれば現地にアクセスできるまでに時間を要する。東日本大震災、熊本地震とSNSで発信される現地の人たちの声は、取材の大きな柱になった。日本だけではない。パキスタンの大使館襲撃、フランスの過激派テロなど、いずれもハッシュタグで現地の地名をいれれば、たくさんの動画や写真があがっていた。ネットの中から真偽を見極めることも重要になってきている。
デスクになってからは、自分が監修した原稿は、配信後、常にツイッターでチェックしている。自分が直した表現が正確だったか、意図は正確に伝わっているか、読者はどう受け止めたか。その反応は極めて重要な示唆に富む。一方で、それに振り回されない心構えも身についてきた。
さて以上が私の場合だが、私はデスクとなって取材現場を離れて7年になる。今、取材に取り組んでいる世代はどうか。
クラブハウスなど音声SNSまで駆使して取材している社内の先駆者の1人、伊木緑記者に聞いてみた。
伊木さんは2006年入社。私より約10年後輩になる。伊木さんも当初はツイッターを見ているだけだったそうだが、安保法制の取材を機に、実名でツイッターを使い、発信も始めた。ツイッターで発信している人と連絡をとるのに、ダイレクトメッセージが便利だったのが理由だという。伊木さんの場合は、私のような、反応を見極める場所、というだけでなく、相手とつながる取材手段だ。「ツイッターって『サトラレ』だと思うんですよね。いろんな人が頭の中で考えていることが漂っている空間。よく、新聞で何かの問題の反応をまとめるときに、東京では、大阪では、ネットでは、とやっているときがあるけれど、そうではない。ネット空間というのはどこか別な場所ではなく、いろんな人たちの頭の中にあることが浮かんでいるところ、という感じです」
その「感じ」は第一世代の私にはわかるような、わからないような感じなのだが、伊木さんにとっては、そこは生身の人間と直結した「リアル」だ、ということだ、と理解した。そして2人で話していて思った。学生のころからSNSがあった世代はどう考えているのだろう。次の回では、この世代の人たちにも聞いてみようと思う。