【悲報】10代の若者の間で大麻が大流行　この国はすっかりダメになってしまいました

2020年は「大麻バブル」でもあった！
違法薬物の販売が勢いを増している（画像はイメージです）photo by iStock

　元刑事の私がわざわざ説明することもありませんが、新型コロナウイルスの感染拡大により、人々の暮らしは一変しました。飲食店への経済的なダメージ、医療関係者への負担増……。

　しかし、コロナ禍で勢いが増しているものがあります。

　そのひとつが、反社会的集団、おもに暴力団ですが、彼らによる違法薬物の販売でしょう。

　暴力団にしてみますと、コロナ禍で飲食店からカスリ(みかじめ料)を取ることはできません。取れば、店をつぶすことになるからです。コロナが明けた将来のことを考えれば、先の長いお付き合いをしたほうが賢明というものです。

　とはいえ彼らとて、手ぶらでいるわけにいきません。そんな彼らにとって、薬物の売買は重要なシノギとなります。とくに単価が安い大麻は、ユーザーにとって魅力的に映るらしく、広く、大量にサバけているようです。

　2020年版犯罪白書のうち、20歳未満の摘発者数が前年と比べて大幅アップしたことも注目すべきポイントですが、そもそも大麻取締法違反で摘発された人数が4570人と、統計のある1971年以降で初めて4000人を超えています。前年と比べても、21.5％も増えているのです。

　そんな「大麻バブル」の起きている最中、若者の大麻汚染を題材にとっている小説が刊行されたというので、私はさっそく読んでみました。

　私は以前、児童向けに『ニッポンの刑事たち』というノンフィクションを刊行したのですが、その編集担当者から勧められたのです。しかも、物語の中で大麻にハマるのが中学生だと聞き、かえってリアルな仕上がりを期待しました。

　といいますのも、どうすれば薬物とアクセスできるかという情報だけであれば、もはや小学生でも気軽に目にしている時代だと、現場の刑事から聞いているからです。

　小、中学生のうちから、「ハッパ」「クサ」「野菜」「チョコ」という大麻の隠語を知っているというのですから、おそろしい話です。

　このたび読んだ吉野万理子さんの『強制終了、いつか再起動』という作品の凄みは、おそらくここに書かれているのと、ほとんど変わらないシチュエーションが、今、この瞬間、どこかの子ども部屋で行われているであろう点にあります。

　それには確固たる理由があるのですが、それは、みなさんお読みになって腑に落ちたほうがよいでしょう。

　加地は一発目の大麻経験からハマってしまった理由について、「風呂に入るときの温度、熱いのが好きなやつも、ぬるいのが合うやつもいるじゃん」というたとえを使って、クスリが体に合うか、合わないかを説明していますが、これもリアルな表現です。

　まさに、「合う、合わない」の世界だと、薬物依存の経験がある者は口をそろえるものです。

　加地に大麻をすすめた安岡という大学生は、最近はパイプでは吸わず、大麻リキッドを電子タバコで吸っているという発言もしています。

　著者の吉野さんは、薬物依存者の支援組織である日本ダルクをはじめ、現代の薬物犯罪について取材されたと聞いています。こうした何気ない会話に、その経験が活きているのでしょう。

　「薬物なんてさ、一生自分とは関係ないって思ってたし。前の学校で、そういう授業受けたとき、こんなのやるわけねー、って思ったし。でも、ふわっと目の前に薬物が現れると、思いがけなさすぎて現実味失う。仲いい人がやってて、その人が異常者でもなく、ごくフツーに見えるとさ」

　大麻の恐ろしさは、安価に、そして容易に手に入るところにあります。5000円もあれば、手に入れられます。

　昔は、路上に外国人の売人がうろうろしていて、彼らに声をかけカネを払うと、道の植え込みなどを指定してきて、そこに置かれた薬物をゲット……という方法で売られていたりしましたが、いまや街の中には防犯カメラがあふれていますから、リスクが大きいので、この方法は取らないようです。

　では、どこで売られているのでしょう？　
　驚くことに、ふつうに店で売られているのです。

　私が把握しているうちの一軒は、都内主要駅のすぐ近くにあり、外国人が商いをしていますが、奥の鉄の扉の中で大麻の売買がなされていました。クラブの黒服が、店内で手渡しで売るというスタイルも廃れていないようです。

　「入り口になる薬物ってことだよ。大麻で慣れて、そこから覚せい剤とか、もっとヤバいのを使うようになるってさ。全然そうじゃないのにさ」(本書より)

　小説に登場する大麻を吸ってしまう少年のセリフですが、これもリアルです。

　薬物依存者の中には「大麻はヌケが早くていい」といったことを言う者もいます。大麻を吸うということ自体を、さも軽いことのように表現します。

　じつは、私、アイスクリームが好きなのですが、たとえばコンビニで1つ、アイスを買って帰れば、その日、それを食べて満足するでしょう。しかし、10個買って帰ったとしたら、きっと、10個とも食べてしまうかもしれません……。

　クスリも同じなのです。一度ハマれば、あればあるだけ使わずにいられなくなり、それを使い切れば、また欲しくなる。この繰り返しです。

　少年犯罪を担当する警察の生活安全部は、こうした長期休みの間に、特殊な経験をするケースが多いと目を光らせています。

　「いやいや、まさか、うちの子が薬物なんて……」そう思われる方は多いでしょう。もちろん、そうあってほしいのです。

　ただ、異変をキャッチする手立ては頭に入れておいて損はないでしょう。

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・カネづかいが荒くなった
・親のカネを持ち出した
・スマホの画面を神経質なまでに人に見せないようになった
・部屋にこもる頻度が上がった
・部屋の中が、嗅ぎ慣れないにおいがした
・理由がわからないが部活動をやめ、付き合う友人が変わったようだ
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　繰り返しますが、中高生が大麻を手に入れるのに、彼らがそのような店に出入りする必要はありません。

　要は、「誰か」が手に入れさえすれば、その大麻がじわりじわりと別の「誰か」に、リレーのように下の世代へと下りて来るのです。そして、その「誰か」は、お子さんにとって、とても信頼できる兄貴分、姉貴分だったりするかもしれません。

　『強制終了、いつか再起動』という小説、私は単なるフィクションとはとらえませんでした。

　ここには、「じつによくある、若者が大麻吸引の一歩を踏み出す風景」が描かれているからです。